リハビリ拒否がある方への超具体的な対応方法

「リハビリ拒否が強い人が担当でメンタルがやられそう」

「先輩に相談しても『がんばって』としか言われない」

「具体的にどうすればよいか知りたい」

そんな方に向けてこの記事は書いています。

 

皆さんこんにちは!

セラピストの為の知って得する情報サイト「セラトク」を運営している

みやじーです。

 

私は現在ある総合病院の整形外科急性期チームの副主任をしています。

そこで必ずと言っていいほどある悩みが「リハビリ拒否」です。

これを読んでくださっている皆さんも多く経験する悩みではないでしょうか?

 

「リハビリをしましょうと言ったら『帰れー!!!』と怒鳴られた」

「『マッサージをしてほしい』とばかり言って運動をしてくれない」

こんな事は日常茶飯事です(笑)

 

こうゆう方にリハビリするのって

本当に疲れますよね・・・

 

そこで今回は私が普段実践している、

リハビリ拒否がある方の対方法を超具体的にお伝えします。

よくある

「患者さんの本当の気持ちを知ろう」

「まずは信頼関係からだよ」

みたいなものでは終わりません。

超具体的です!

 

この記事を最後まで読んでいただくと

・リハビリ拒否があったら何をすればよいかわかる

・リハビリ拒否のある患者さんに入るのが楽になる

・なるべく拒否されない方法がわかる

といったメリットがあります。

是非最後までお付き合いください。

 

大前提として 

・リスク管理はしっかり行いましょう

何かしらのリスクのせいで、リハビリ拒否をしているかもしれません。

・しっかりと敬意を払いましょう

認知症だからといって、馬鹿にしたように接したりしてはいけません。

 

それでは参りましょう!

目次

1.リハビリを行うこと自体に拒否がある場合

まず初めは、リハビリを行う事態に拒否がある方の対応法です。

主に認知症を合併している人が多いです。

 

「帰れー!!!」「殺されるー!!!」

なんて言われる事も多いでしょう。

酷いときは殴られます(;^_^A

 

「リハビリ出来る状態じゃない」

と思っても、「じゃあやりません」とはいかないのが、セラピストの辛いところです。

 

ではどうするか?

1.他職種や上司に報告・相談

まずは、他職種や上司、に報告・相談しましょう。

「リハビリの拒否が強く、運動どころではありませんので中々難しそうです」

これでOKです。

 

これによって、

”リハビリの進行はだいぶ遅れる”というのが共有できます。

「リハビリ拒否があるんだから、言わなくてもわかるでしょ」

と思う方もいらっしゃると思いますが、

意外とそうではないんです。

 

以前こんなことがありました。

肩関節を骨折し、手術をした患者さんで

リハビリ介入当初から「痛いから動かさないで!」と可動域訓練を拒否されている方がいました。

「痛いですけど、多少は動かさないと動かなくなりますよ」

といくら説明しても

「痛い!」「無理!」

といって可動域訓練をなかなかさせてもらえませんでした。

私としては「これじゃあ全然良くならないけど、まあ先生もわかってくれるだろう」

と安易に考えていましたが、

ある日患者さんから「リハビリで一向に良くならないから担当者を変えてほしい」と連絡がありました。

さらに主治医のほうから「なんで良くならないの?リハビリちゃんとやっているの?」と指摘を受けてしまいました。

 

当然カルテには書いていたので「報告しなくてもわかるだろう」と完全に油断していましたが、意外と他の人はわかっていないこともあります。

これは完全に報告・相談の義務を怠った私の責任です。

この件に関しては、大問題となり、かなり怒られたので非常に印象に残っています。

 

よって、まずは他職種の方や上司に報告しましょう!

報告・相談することで、

「じゃあリハビリどころではありませんと家族に説明するよ」といって、リハビリの目標を下げてくれたり

「そんなに大変な人なら、なるべく担当が増えないようにするね」

と助けてくれるかもしれません。

そして、もし「リハビリが進んでいないようですけど?」というような意見がご家族から来たとしても他職種全員で共有できていれば

「リハビリの拒否が強くて、運動どころではないようなんです」

と説明してくれます。

きっと皆さんを守ってくれますよ。

 

2.悪化を防ぐことに尽力する

リハビリ拒否がある方を担当すると

「何を目標にしよう・・・」と思いませんか?

 

家族の希望は「トイレに行けるようになってほしい」であっても

リハビリの拒否が強いのでそれどころではない。

 

だからといって、ただマッサージするだけにもいかない。

ではどうするか?

「悪化を防ぐことに尽力する」ことです。

 

リハビリ拒否がある方の第一目標は「改善」ではありません、「維持」です。

リハビリに拒否があるという方は、ベッド上で過ごす時間が非常に長くなります。

皆さんもご存じの通り、長時間ベッド上で過ごすことはデメリットだらけです。

①褥瘡

②沈下性肺炎

③深部静脈血栓症

④急に動いてしまっての転倒

⑤不動による関節可動域制限

等々

放っておけばどんどん悪くなります。

 

そこで、「このリハビリ時間いっぱいを使って何とか寝返りをしてもらう」

などと目標を定めることが重要です。

初めは拒否も強いので全く体を触らせてくれないかもしれません。

なのでまずは笑顔で接して簡単な日常会話からスタートする。

徐々に和んできたら手を触ってみる。

その手でベッド柵をつかむようにリーチさせてみる。

軽く臀部を介助して、寝返り完成!

みたいな感じです。

これだけでリハビリの時間が終了するくらい時間をかけてゆっくり行います。

それでいいんです!

胸を張って「私は褥瘡というリスクを防ぐためにリハビリをしている」と思ってください。

 

「改善」を目指して無理やりリハビリを行うことほど無意味なことはありません。

・本人は泣き叫ぶ

・言われるセラピストは辛い

・日常の介助にも拒否が強くなる

・そこまでやって、すこし動けるようになっても実用的ではない

そこまでしてやる必要ありますか?

やっている我々も辛くなりますよね・・・

 

それよりも

・少しでも不安が解消するように、笑顔で接したりマッサージする

・褥瘡予防のために、ポジショニングや寝返り練習をやる

・転倒予防のためにベッド環境を看護師さんや家族と話す

・訪問であれば、日々家族が困っている話を聞く

事のほうが大切です。

 

拒否が強い方の担当となった場合は、「悪化を防ぐ」ことに尽力してみて下さい。

きっと気持ちが楽になりますよ(^^)

 

2.一部のリハビリに拒否がある場合

続いては、一部のリハビリに拒否がある方への対応方法です。

「運動はいいからマッサージしてよ」

「歩きたくない、ベッドの上でやって」

というパターンです。

 

じゃあもういいよと思って

「わかりました~」と相手の言うことばかり聞いていると

上司や家族から「なんで良くならないの?」と言われてしまう。

 

完全に板挟み状態です・・・

 

ではどうするかというと、

①本当にやらなければいけないかを考える

②難易度を細かく設定する

③具体的な内容で脅す

の3点を意識すると良いです。

順に説明していきます。

①本当にやらなければいけないかを考える

患者さんがやりたくないといったプログラムは、本当に絶対に必要なものでしょうか?

そして、絶対に必要かどうか?は

「あなたが思い描く理想の状態」になるため

ではなく

「患者さんや家族のHOPE」を叶えるため

である必要があります。

 

例えばよくある例として、

「膝関節伸展がー3°なんですけど、全然自主トレやってくれないんですよね」

のような相談を受けることがありますが、

そもそもー3°から0°にする必要は本当にあるのか?を考える必要があります。

さらに話を聞いていくと、どうやら患者さんの主訴としては「膝の内側が痛い」というものであり、当然HOPEは「痛みを取りたい」ということになります。

このHOPEを叶えるのに膝の伸展0°獲得は本当に必要なのか?を考えて、

「0°にならないと絶対に痛みが取れない」と判断されるのであれば、やる必要がありますが、そうでない場合はやる必要がありません。

 

私は普段、患者さんのHOPEを達成するために絶対に必要だと判断されないものに関しては、基本的に患者さんの言うとおりにしています。

しかし、絶対に必要と判断されるものに関しては、絶対に譲りません。

 

このギャップが効果的です。

なんでもダメダメ言っていると、相手は窮屈に感じてしまいますし、「ダメ」と言われる事に慣れてしまってあまり言葉が刺さりません。

しかし、普段は私の言うこと大体は聞いてくれるという人が、「これだけは絶対にやってください」と言ったらどうでしょう?

「まあ普段は言うこと聞いてくれるし、言うこと聞くか」

となります。

普段からあまりガミガミ言わないけど、ここぞという時は譲らない!

そんな感じでやってみてください。

②難易度を細かく刻む

仮に「歩行訓練」が絶対にやってほしい訓練であるにも関わらず、患者さんから「やりたくない」と言われてしまった場合の対応法です。

 

歩くor歩かないではなく、

もう少し難易度を細かく設定してみましょう。

 

例えば歩行距離、

「ほんの10mほどで結構ですので」

「お部屋の中だけでもお願いできないでしょうか?」

といった感じで、距離を細かく刻んで、

とにかく「歩かない」という選択だけにはならないようにします。

 

「私が後ろから支えますので」

「こちらの歩行器を使用してもよいので」

と介助の量を調整するのもよいと思います。

 

難易度設定の際のポイントとして、「ストレッチゾーンを狙う」というものがあります。

(図は 中原敦著「フィードバック入門」P80より)

 

例えば、部屋の中を歩くだけなら自立している人にとって

「部屋の中を歩きましょう」は、快適空間に位置され、この負荷量では成長が期待できません。

逆に「外を歩いてみましょう」は、パニックゾーンに位置され、拒否される可能性が高いです。

よって、「廊下を10mほど歩きましょう」のようなストレッチゾーンに位置される負荷量を設定することで、拒否なく成長が期待できる訓練となります。

 

③具体的な内容で脅す

これは、乱用禁止の裏技です。

 

どれほど交渉しても「うん」と言ってくれない方や、危険行動を繰り返す方などに使います。

私が普段良く耳にする声掛けとして、

「このままだと歩けなくなっちゃうよ!」

「家に帰れないよ!」

というものがありますが、

不思議と、これって効果がないことが多いです。

 

それはなぜか?

具体的でないからです。

「歩けなくなる」「自宅に帰れない」という状態になった時の具体的なイメージがついていないため、

「もう年だから」や「娘に手伝ってもらうよ」のような諦めの言葉も多く聞かれます。

 

なのでもう少し具体的な声掛けにしてみましょう。

「歩けなくなっちゃうよ」

「このままだと歩けなくなって、トイレに行くのにも誰かを呼ばなくてはいけなくなって面倒ですよ。手伝ってくれる人も毎回すぐに来てくれるわけではないので、長い時間我慢しなくてはいけないですよ」

 

「家に帰れないよ」

「家に帰れないとなると、施設に入所ということになります。そうなると好きな時間に起きたり、好きなご飯を食べたりするのが難しくなりますよ。だって共同生活ですから」

 

どうですか?後者のほうが効きそうじゃないですか?

てか怖いですよね(笑)

 

だから乱用は禁止です。

また、頑張れば改善が見込める人に限ってやってください。

 

ちなみに「先生に言いますよ」も効果的です!

 

最後に実例を紹介します。

TKAを行った患者さんで、とにかくマッサージの希望が強い方でした。

僕としては積極的に歩行訓練をしてほしかったのですが、

「痛くなるのが怖い」といってなかなかやってくれない方でした。

ではどうしたかというと

「歩いてくれないなら、リハビリの時間全部歩行訓練にしなきゃいけなくなるので、マッサージの時間なくなりますよ

と言いました。

この方はこれで歩いてくれるようになりました。

マッサージの時間が無くなるというのが何よりも嫌な事だったんですね。

 

 

以上参考になれば嬉しいです。

冒頭にも申しましたが、リスク管理と敬意は忘れずに!

自分で抱え込んでも良いことないので、どんどん相談しましょう!

 

何か質問ございましたらコメント欄かTwitterまでお願いします!

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